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2010-06-22(Tue)

五行風水記~クマとハルカ~プール(1)

    
 八月最初の日曜日。ひと夏のうち、もっとも暑い時期だろう。
 今日は菊池と飯塚に誘われて、良太郎と悠は郊外にあるプールに遊びに来ていた。
 良太郎としてはインターハイに個人戦で出る以上、怪我や体調管理も少しは考えなければいけない訳だが、海に行くよりは安全だろうと行くことにしたのだ。
 それに来年の受験を考えると、気楽に遊べる最後の夏かもしれないのに、部活や勉強ばかりというのももったいないだろう。
 開場時間を三十分程過ぎてから入場したが、雲がまばらにしか見えない晴れた空に絶好のプール日和と考えた人間は多くて、すでに場内はそれなりの混み具合を見せていた。
 更衣室でそれぞれが空いてるロッカーを探して水着に着替えた。
 「やっぱり、クマはイイ身体してるなぁ。さすが柔道部。」
 先に着替え終わり、更衣室の入口で待っていた菊池がそう言いながら、ぺちぺちと軽いパンチを良太郎の腹へと浴びせる。
 「お前はまた派手な柄のパンツだな、それ。」
 「夏だからな!」
 良太郎が膝までの黒のサーフパンツなのに対して、菊池は黄色の下地にヤシ柄がいくつもプリントされているボックスタイプの水着だ。
 「待たせたな。」 
 強い日差しが眩しいのか、遮る様に手を額に当てて眼を庇いながら悠が出てきた。
 薄い生地で出来た白の半袖パーカーから見える肌は、どこもほとんど日に焼けていない。白いトランクスタイプの水着からすらりと伸びた両足は体毛も薄いのか、良太郎と同じ男とは思えない程に綺麗な肌をしている。
 「うは!なんでビキニ。なんかえろいよ、お前。」
 最後に出てきた飯塚を見た途端に菊池が声を上げた。視線を上げて更衣室の出入口を見ると、黒の競泳用らしいビキニにライトグレイのパーカーを着た飯塚が出てくるところだった。
 「たまにプールで泳いだりしてるからだが。えろい気がするのはお前がそう見ているからだ。」
 飯塚はフッ、と菊池の言葉を鼻で笑って流す。確かに前を開けたままのノースリーブパーカーから覗く腹筋は割れていた。
 帰宅部には見えない程度に鍛えた身体付きもあって、眼鏡を外した飯塚は、いつもの秀才然とした感じとは全然違い、スポーツマンらしく見える。
 「お前は少し鍛えた方がいいんじゃないのか?」
 そう言いながら、飯塚がむにっと菊池の脇腹の肉を摘んだ。
 「ちょ、痛いって!そんなに太ってないから!」
 大げさに痛がってみせる菊池を見て、飯塚が面白そうに笑った。

 飯塚が用意してきたレジャーシートを広げて休憩場所を確保すると、それぞれが日焼け止めを塗り始めた。
 手の届かない部分は、互いに塗り合う。菊池と飯塚がセットになったので、自然と良太郎と悠もセットになった。
 「そういえば、背中は一気に焼くと、背骨に沿ってタテガミが生えるらしい。」
 良太郎の広い背中に日焼け止めを塗りながら、悠がふと思い付いたようにそう言う。
 「どうせ塗ってもらうなら女の子が……ちょ、飯塚、お前背骨のところだけ塗ってないだろ!人で変な実験すんな!」
 「気が付いたか、つまらん。」
 悠の言葉を信じたらしい飯塚が、菊池の背中で器用に日焼け止めの塗り分けをしていたようだが、さすがに菊池も手の動きや肌の感覚で判ったようだ。
 二人のやりとりに良太郎が笑っていると、はい、ときちんとキャップの閉められた日焼け止めのチューブが悠から手渡された。
 「ありがとう。じゃあ、お前も背中塗ってやるよ。」
 「ん、頼む。」
 悠に手渡された別の日焼け止めのチューブから少し手にクリームを押し出した。
 良太郎に向けられた背中に手を這わせ、クリームをよく伸ばしていく。傷跡やシミひとつない肌の感触は見た目通りに滑らかな手触りで、馴染んだ自分の肌の感触とは少し違うように感じた。
 「塗り残したところがないようにしてくれよ。じゃないと赤くなるから。」
 「もしかして、黒くならないのか?」
 日焼けしても全員が全員、こんがりと焼き色が付く訳ではない。たまにどんなに焼いても赤くなるだけだったり、火傷のようになる人間もいて、悠もその類らしい。
 「家系的に母方に似るとそうみたいだ。」
 「ふうん。」
 悠に言われるままに念入りに塗っていると、ふと背後から名前を呼ばれた気がして、何気なく振り向いた。
 「あ~、やっぱり、久間センパイじゃないですか~。」
 思わず手を止めた良太郎の視線の先に立っていたのは、格好は違えど見覚えのある人間だった。

 振り向いた良太郎の視線の先に立っていたのは、嬉しそうにと笑った高倉と困ったような表情を浮かべた小林だった。
 「こんなところで会うなんて、偶然ですね。」
 今日の高倉はセパレートタイプの水着を着ている。ボトムのデザインは短いスカートのような形をしているが、メリハリのある体付きをしているのがわかる水着だ。
 高倉という名前とメアドは知ってはいるものの、メール自体はまだしていなかった。会ったのも図書準備室が初めてだったし、偶然ですね、と言われてもどう返答していいか解らない。
 そもそも良太郎は控えめな大人しそうな感じが好みであって、自分から積極的にアプローチしてくる女の子が苦手なのだ。
 「小林じゃないか。それと高倉さんだったっけ?」
 良太郎が返答に窮していると、振り向いた悠が取り成すように小林に話し掛けた。
 こんにちは、と控えめな挨拶が返ってくる。小林の方はサロペットを着ているのもあって、露出度は高倉より少ない。
 二人の水着姿はそれぞれ似合っている。もっとも色の使い方も体型のメリハリも小林よりも高倉の方がずっと大人っぽい。
 「二人って、クマとハルちゃんの知り合い?」
 こっそりと菊池が聞いてくるので、良太郎は取りあえず頷いておく。
 「あの、空いてる場所探してるんですけど、良かったら一緒に使わせてもらっていいですか?」
 高倉のお願いに別に断る理由もなく、むしろ菊池は「大歓迎!」とスゴイ勢いで首を縦に振っている。
 「ええと、こっちが図書委員の一年で小林、それと友達の高倉さん。で、こっちが菊池と、飯塚。二人とも僕らと同じクラス。」
 悠がそれぞれを簡単に紹介する。
 「いっぱい遊びましょうね、センパイ。」
 目が合った良太郎に向って、高倉がにっこりとそう笑い掛けてきた。

 午後二時を過ぎたところで、少し休憩することになった。
 「ちょっと飲み物買ってくるけど、いる人は?」
 悠の言葉に、菊池が手を上げ、続けて高倉も手を上げた。気が付けば、結局全員がそれぞれに何かしらを頼んでいた。
 「あ~、じゃあ、俺も一緒に行く。」
 さすがに一人で持てる量ではなくなったので、良太郎がそう言って腰を上げた。
 「久間センパイ、」
 「あ、高倉さん、あたしが塗ってあげる。」
 どうやら、高倉が背中の日焼け止めの塗り直しを良太郎に頼もうとしていたらしいが、小林が代わりを買って出てくれたようだ。
 「しかし、彼女はどこから聞きつけてくるんだろうな、久間のこと。」
 売店に向かって歩きながら、面白そうに悠が良太郎にそう言った。悠は高倉たちとの今日の遭遇は偶然ではないと考えているようだ。
 「もしかして、久間って相手から積極的に来られると、逆に引くタイプなのか?」
 「ああ、そうかもな。」
 良太郎は控えめで清楚、昔ながらの大和撫子が好みであって、自分から積極的にあれこれと近付いてくるタイプは好みではない。
 昼食の時に、良かったらどうぞと言って出されたサンドイッチからして、見るからに多めに作られていた。
 それに菊池や飯塚も含めてだが、高倉とはあとでメアドを交換することになっている。不自然ではないが、高倉が徐々に距離を縮めようとしているのは間違いなさそうだ。
 「今日、見ててそう思った。高倉さんよりも小林の方がキミ好みか、もしかして?」
 「どっちかと言えば、そうだな。」
 「見かけは体育会系なのに、中身は草食系なのか。」 
 おかしそうに悠は小首を傾げると、下から良太郎の顔を覗き込んだ。
 「とにかく、夏休みは忙しいんだ。インターハイで良い成績出したいしな。だからそう来られても困るんだよ。」
 「ふうん。真面目だな。」
 「大学に進学する上で柔道の成績がどう関わってくるか判らないからな。前から付き合ってるならまだしも、今は誰かと付き合い始めるのは無理だ。」
 なるほど、と悠の頭が頷くのが良太郎の目の端に映った。
 「……そういえば、試合前は禁欲したりするのか?」
 「ああ、するぞ。」
 高校の柔道部に入部して最初の大会の前に、試合三日前はセックスだろうとオナニーだろうと控えるようにと部長にはっきりと言い渡された。
 たいして他意はないのだろうが、どうも悠に下半身事情を聞かれると良太郎は戸惑ってしまう。今も答える声が自分でもわかるくらいには硬かったのだから。

 午後三時を過ぎると、まだ気温は高くても、開場からいた客の中には帰ろうという者が出てくる。
 真昼の混み具合からすれば、ちらほらとプールに人のいないところも見え始め、良太郎達もそろそろ帰ろうかという雰囲気になった。
 それが起きたのは波のあるプールでひとしきり遊んだあとのことだった。
 「なんか寒くないか?」
 そう言いだしたのは飯塚で、見れば女の子二人と菊池の顔色は随分と白く、寒そうだ。
 確かに水の外はまだ真夏の熱気で暑いのに、プールの水だけが随分と冷えているように良太郎にも感じられてはいた。
 「……すぐに上がった方がいいな。」
 悠が他の四人をそう促すと、プールの浅い方へと移動していく。やはり寒さを覚えたらしい何人かの客が同じように上がっていた。
 「妙な気配がする。」
 良太郎にだけ聞こえるように、歩きながら悠がそう囁いてきた。
 「まさか、『魄気』とか?」
 「どうかな……。」
 視線は前の四人を向きながら、二人が小さな声で言葉を交わしていると、不意に前を歩いていた高倉が悲鳴を上げた。
 「どうかしたのか?」
 「な、なにかに足を掴まれた気がして、」
 良太郎に訊かれた高倉が怯えた表情でそう訴える。 
 と、すぐにあちらこちらで同じ様な悲鳴が上がり始めた。気が付けば、すでにプールの深さは腿の辺りまでしかないはずなのに、随分と波は荒く、腹のあたりまでも打ち寄せてくる。
 「早くプールから出よう。」
 異常に気が付いたらしい監視員がプールから出るように声を張り上げている。装置を止めろ!というスタッフの怒声が聞こえてきた。
 また悲鳴が上がる。
 良太郎が視線を悲鳴の上がった方へと向けると、その先で水着姿の人影が何の前触れも無く、水中へと引き込まれたように沈んだのが見えた。
 自分たちとは反対側で起きたそれは、段々と良太郎達の方へと向かって来ているようだ。
 「まずいぞ、これは、」
 同じ方を見ていた悠がそう言い掛けたところで、その姿が波の中へと沈んだ。
 「ハルカッ!?」
 咄嗟に伸ばした良太郎の手に悠の手が触れた。無意識のうちに掴もうとするその手をなんとか捉え、さらに辿って触れた身体を腕の中へと抱き込むと、水面より上へと悠の半身を引き上げた。 
 「風よ、我が足を縛める者を吹き飛ばせ。」
 腕の中で悠がそう唱えるのが聞こえた途端に、良太郎の視界のほんの1メートル先で盛大な水飛沫が沸き起こる。
 「さすがに水中だと使えないからな。」
 良太郎の腕に抱かれたまま、悠が苦さの混じった声でそう言った。
 「触られて判った。『魄気』の感触だった。」
 「じゃあ、」
 「仕方ないが『浄化』する。しないと飲み込まれた人も救助出来ない。藤代さんに連絡してくれ。あとは任せる。」
 それだけを言うと、良太郎の返事も聞かずに悠が小さな声で言霊を紡ぎ始める。
 「水よ、水の御霊よ、汝ら空にたゆたうもの、その腕に抱き数多潤すもの、汝ら水の御霊よ。」
 良太郎の腕に抱かれたまま、悠の身体が徐々にその重さを預けてくる。押し寄せてくる波に流されないように、立つ足に力を入れた。
 「……優しき清めの水と成りて、ここに集いし古き彼の者らが想い、そのすべて解き放て。」
 最後の一節が唱え終わったのと同時に二人の足元から、緩やかに波が起こる。
 いくつもの穏やかな波がプールの奥へと向かっていき、奥から押し寄せる荒々しい波とぶつかり合い、白く弾けた。
 やがて最後にひと際大きな波が波打つと、プールは穏やかな水面を取り戻した。
 水面にいくつかの人の頭が浮かんでくると、すぐに監視員やスタッフがプールの中へと飛び込んでいく。
 「うまくいったか。」
 良太郎の耳にそう呟いた悠の声が聞こえた。同時に腕の中の身体から力が抜け、重みを増した。

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水鳴沢

Author:水鳴沢
自分の書いてるものはオリジナルBL小説ライトノベル風味じゃないかと思います。

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