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2010-07-10(Sat)

五行風水記~クマとハルカ~残暑

   
 夏休みが終わって、二学期が始まった。
 二学期には九月末に文化祭が、十一月半ばに修学旅行がある。
 それなりの進学校だが、文化祭はやはり盛り上がる。受験を控える三年生は当日までの準備時間を余り取れないせいで、どうしても手間の掛からないものを選ぶ。もともとおおよその志望大学分野でのコース分けをしているから、二年生から三年生になるときにクラス替えはない。それが解っていることもあって、二年生のうちに準備に時間のかかるものやあらかじめ練習が必要なものをやることが多い。高校生らしいことは二年生のうちに済ませておこうということだ。
 そして、文化祭が終われば中間テストがあって、その後に修学旅行が控えている。ここ数年は京都・奈良を経由して中国地方に行くことになっている。
 昔は、世間の流行に乗って北海道にスキーに行ったり、海外に行ったこともあったらしいが、世の中でだんだんと物騒で危険なことが増えているから、無難に国内にしているという話だ。国内であれば仮に病気やケガをしたとして、親が迎えに来ることになったり、教師が送り届けることになったとしても、すぐに対応が出来るということもあるようだ。

「では、ホームルームを始めます。今日の議題は文化祭のクラスの出し物です。知ってる人もいると思いますが、うちの学校は三年生になると受験があるので、準備に時間が取られるものはやらない傾向にあります。なので、派手にやれるのは今年が最後です」
 残暑というにはまだ十分夏のような暑さの日の午後、教壇に立ったクラス委員長がそう言った。水曜日の6時間目という時間にあるせいもあって、クラスの雰囲気も緩んでいる。窓から入ってくる温い風が抜けていく引き戸からは、他のクラスのざわめきが聞こえてきていているが、校舎内の全クラスが一度にホームルームをしているせいか、授業の時とは違ってどことなく気の抜けたような気配が漂っていた。いつもはどこかから必ず聞こえてきている、他のクラスの授業で張り上げられる教師の声も、今は聞こえてこない。
 暑さで座っているだけでタラリとこめかみから顎に流れ落ちる汗を、良太郎は首に掛けたタオルで拭った。休み時間に水道で濡らしてきたばかりだが、もうすでに生温くなっている。
 半袖のカッターシャツの前は四つ目まで開けて下着が見えてしまっているし、筋肉が盛り上がった脹脛のせいでやりにくかったが、スラックスの裾も膝下まで捲り上げていた。さらに靴下も脱いで、上履きの上に素足を乗せているくらいだ。
 下着のシャツはメッシュ生地の吸水速乾性を使っているものだし、パンツもメッシュ生地が多めで面積の少ないビキニにしているが、やっぱり暑いものは暑い。暑さと汗のせいでシャツもバンツも身体に張り付いて、その不快感が良太郎を煩わせている。
 同い年の平均的な男に比べると筋肉の割合が多い良太郎は、周りに言わせるとどうやら暑がりのようだ。
 柔道部の顧問の話だと鍛えて筋肉を付けた時、熱を発生させる筋肉は立体的に増えていくが、熱を放散させる皮膚は平面的にしか増えないからということらしい。ようは筋肉を付けていけばいく程、皮膚から外に出せる熱の効率が悪くなるからだ。
 もっとも本当のところは判らなくて、ただ柔道を始めてからさらに筋肉の量が増えたせいなのか、今では夏物の服を着始める時期は家族の中で一番早い。
 始業式の日の最後にクジ引きで決めた席替えで、今度は良太郎の窓際側の斜め前に移動してきた悠を見れば、少し汗ばんで見える程度だ。窓から入ってくる緩い風がカーテンを揺らし、たまに悠の頬に触れている。
 里で『御霊』と契約をしてから良太郎には感覚的に判るようになったことだが、悠は学校生活で割と気軽に『術式』を使う。授業中でもあっさりと使ってしまう。
 今日だって風がなくなると、パタパタと誤魔化すように下敷きで自分を扇いだ後に、口元をそれで隠してこっそりと術式を使っていた。そして、その後すぐに使役された『風の御霊』の力で起こされた風がカーテンを揺らし始める、と言った具合だ。
 そんな悠にその術式教えてくれないのか、と良太郎が聞いたら、
「訓練にならないからダメだ」
 と、素っ気なく断られた。楽をしたければ、自分で考えて術式を編み出せということらしい。
 暑さにぼうっとしながら、パタパタと下敷きで自分を扇いでいると、2時間続きの体育があった日の6時間目でも、まだ考える余力の残っている連中が、劇とかお化け屋敷とかお約束な出し物を言っていた。
「喫茶店とか食べ物系はどう?結構儲けられるって聞いたけど」
 前の方の席から菊池のそんな声が聞こえた。
「確かに儲かるが、飲食物を出すのはいろいろと面倒だぞ。あらかじめ保健所に届けを出さないとならないしな」
「それに火を使うものは原則として、校舎の中では出来ません。校舎の外ならいいかな。レンジでチンするくらいなら、校内でも大丈夫」
「生モノを加熱調理するものは食中毒の危険性があるから、基本的にダメだ。前日作り置きもなし」
 担任と委員長の注意点に、む~と菊池が無念そうな声を上げている。
「そっか。……メイド喫茶やってみたかったんだけどな~」
 ぼそっと言った菊池のひと言に、女子からセクハラ!反対!という声が上がった。
「……それは、お前がメイドの格好をしたいのか?」
 菊池の真横に座っていた飯塚が良く通る声でそう言った。
 眼鏡を掛けた秀才に見えるが、たまにこういうボケたことを言う。
 一瞬、シンと教室の中が静まり返る。が、すぐに何人かが噴き出し、また何人かが相変わらずだと言わんばかりに鼻で笑った。
 女子の何人かが小声で何かを相談していたかと思うと、菊池の方を見て笑っている。
 すると、その内のひとりから勢いよく手が上がった。
「ハイッ!逆メイド・執事喫茶がいいと思います!」
 暑さで溶けていた良太郎の頭が、少し遅れてそれを理解する。またとんでもないことを思いついたものだ。
「男子は室内装飾と当日のメイドコスでの接客。女子は当日の調理担当、それにメイドか執事のコスプレどっちかで接客。女の子でもメイドの服は着てみたい子がいると思うし、どうしても接客が苦手って子もいるだろうから」
「ちょ、待て!なんで、男子がメイド限定なんだよ」
「逆メイドって言ったでしょ」
「普通にメイド執事喫茶で、やりたくないヤツは装飾・調理担当でいいじゃねーか」
「男子に調理させると、自分たちで食べちゃうでしょうが!」 
「売り物にそんなことするかよ。それになんで逆、」
「そんなの、面白いからに決まってるからじゃない!」
 抵抗する菊池の言葉を、それぞれ別の女の子が打ち落としていった。
 律儀に委員長が黒板に逆メイド喫茶、と書いている。
「もう、お前ヘンなこと言うんじゃねぇよ!」
 にわかに団結を始めた女子に敵わないとと悟ったのか、眼尻を釣り上げながら、と菊池が飯塚に噛み付いていた。
「では、もう他になければ多数決を採りたいと思います」
 委員長が黒板から、向き直ると声を張り上げた。
「じゃあ、劇をやりたい人」
 パラパラと何人かが手を挙げて。
「次、オバケ屋敷をやりたい人」
 男子のうち、女の子の身体に触れるかも、という解り易い下心がミエミエな連中が手を挙げていた。菊池も手を挙げている。
 良太郎は中学校時代に一度やったことがあるが、あれは九月末にやって良いものじゃない。窓をほとんど塞いでしまうから室内の温度が上がって間違いなく暑くなる。中に入ってきた客を威かす役の人間は大抵暑さに喘ぐことになる。暑さにやられている今、気分的に余計に暑くなるようなのことを考えたくない。
「次、懐かしの露天」
 確か、射的やヨーヨー釣りを出すと言ってたものだ。割と無難なところだと思い、良太郎は手を挙げておいた。見れば悠も手を挙げている。教室の後ろから見たところ、十人近くが手を挙げていた。
 他にも三つ程案があったが、手を挙げたのは案を出した生徒とその他に一人二人といったところだ。
「最後に、逆メイド執事喫茶」
 やはり、女子のほとんど全員が手を挙げた。たいして互いに話もしていないはずなのに、こういう時の意見の一致というか、団結の仕方は侮れない。
「では、文化祭でうちのクラスは逆メイド執事喫茶をやるということで、生徒会に持っていきます」
 委員長の声に、途端に男子から暑苦しいブーイングが上がる。
「菊池!お前が余計なこと言ったんだ。責任取ってメイド服着ろよ!」
「そうだ!お前が、『お帰りなさいませ、ご主人様。』って言え!」
 もっとも、そう言っている連中の頭は暑さでボケているようだ。確かにメイド喫茶自体を言ったのは菊池だが、妙な方向に話を持って行ったのは飯塚だ。もっとも、良太郎が着せられるよりは、男にしては割と可愛い顔の造りをしている菊池の方が似合うだろう。


「うわっ。クマ、なんだその痣……」
 次の体育の為に良太郎が更衣室で体操着に着替えていると、下着のシャツを脱いだところで近くにいた菊池が声を上げた。
「まさか、ド、ドメスティックバイオレンス?」
 良太郎の脇腹のあたり斜めに入っている指二本くらい大きさの痣を指差し、少し潜めた声でそう訊いてくる。
 随分と極端なところに行った問いに、良太郎は思わず破顔してしまった。柔道の黒帯を持つ息子に痣をつくるような家庭内暴力はどれだけのものだろう。
「新しく通っている道場の師範が容赦なくてな」
 九月に入ってから良太郎は火村に紹介されて、棒術を教えてくれる道場に通っている。『魄気』が人の姿を取っているとはいえ、投げ技や寝技の柔道ではどうにもならない。それに『魄気』を素手で触るのはやはり身体に良くないらしい。
 初めて会った時に火村が言っていた棒術や杖術と言った言葉からネットで調べてみると、柔道しかやってこなかった良太郎が初めて知ったことだが、日本にもいろいろな武器を扱う技術があって、現代でもまだ廃れずに残っているものもあった。 
 その中には動画としてサイトに投稿されているものもあった。
 動画を見てみると、限られた中でも元が何かで動きが違うことが判った。
 柔術から派生したものは、主に戦っている相手を取り押さえ、捕まえる為のものが多い。今の警察で活用されているものも同様らしい。
 空手の中で伝わるものは、やはり相手を一撃で仕留めるような動きをしていた。
 剣術が元になっていると、その動きは時代劇の中で武士が振り回す刀と、長さは違うものの変わらないように見えた。
 実際に木刀使いの火村は剣術から派生した棒術も使えるし、基礎として空手や柔術も身に付けているようだ。
 頼んでいくつかの演武をやって見せてもらった。
 切れのある動きで微かな音を立てながら、その得物が空を切り裂く様は技術を修めた者だけが見せられる動きで、素直にカッコイイと思えた。
 良太郎が、随分いろいろ出来るんですね、と言うと、
「自分のスキルが増えていくのは、結構楽しいものさ」
 と、いつものと同じ調子で答えていた。
 確かにそれまで試合で戦っても勝てなかった相手に、多少の運の要素はあれども勝てるようになると単純に嬉しいものだ。なにせ自分が強くなったのが、目に見える形で証明された訳だからだ。
 なぜ棒術にしたかと言うと、火村や悠に薦められた時にその理由が合理的だったからだ。
 良太郎たちは主に学校の敷地内で行動することが主な訳で、まず何かあった時に武器として現地調達しやすい。体育用の倉庫を調べれば過去に行事で使用した後、不要になったそういうものの一本や二本、必ずあるらしい。それにもし持ち歩いているところを見られても、木刀よりはまだ武器としては認識されにくい。
 日本という国の影の部分に属する『護り人』の組織は、テレビや漫画ばりにいろいろと社会的に不都合な部分は見逃してもらえるようだが、それでもあからさまに武器と分かるような得物は振り回させてはくれないようだ。確かに、ゲームみたいに高校や大学に通う人間が真剣や槍を振り回すわけにはいかない。
 それに以前対峙したことのある『魄気』が憑依していた人間だって、防御力や身体の作りは生身の人間と変わらない訳だから、殺傷力が高い武器だと加減が効かずに殺してしまう可能性だってある。
 良太郎の通う棒術の道場の師範は、火村の紹介だけあって、かなり容赦のない人だった。良太郎の祖父とたいして変わらないような年齢のはずなのに、普段の動きからしてきびきびとしている。
 その動きは剣術が元になっていて、基本から順に教えられてはいるものの、受け損ねたところには当然痣が出来てしまう。シャツから見える腕以外、普段制服に隠されているところは、肩や脇腹といった部分ごとに必ず一つや二つは打たれた跡が痣になっている。
「痛そうだな」 
 着替えの終わって、いつの間にか寄ってきてた飯塚がそう言うと、伸ばした指先で脇腹の痣に触れようとする。
「触るなよ。痛そう、じゃなくてまだ痛いんだから」
 心持ち身体を引いて、良太郎はその指から逃れた。
 動いた時に視線を感じた方を見ると、何か物言いたげな表情で悠が良太郎のことを見ていた。
 多分、また何か自分の責任のようなものを感じているか、考えでもしているのだろう。
 悠が気にすることではないのだ。
 『護り人』になることも、棒術の道場に通うことにしたのも、良太郎が自分で決めたことなのだから。
 良太郎がそうと判る様に悠に小さく首を横に振って見せると、意味が通じて少しは安心したのか、表情が若干柔らかくなったような気がした。

 委員長と女子数人で考えられた案は、すぐに生徒会から許可が下りたようだ。
 次のホームルームでは、メニューをどうするか、場所はどうするのか、そして誰がメイド服を着るのかと言う話になった。
 もっとも50分のホームルームで決められたのはメニューと場所までで、実際に誰がメイド服を着るのかまでは決められなかった。
 良太郎は190センチ近い身長に肩幅もある。さすがにメイド服の規格外だろうから、着せられることはないと踏んでいる。
 ホームルームが終わっても、どの男子をイケニエにするかで盛り上がっている女の子達は、まだ帰る気配がない。
「……久間」
「ん?」
 部活に行く為に、良太郎が机の中の教科書やノートをカバンにしまっていると、悠が良太郎のところまでやって来た。
「痣、直した方がいいか?痛いんだろう?親に見付かったら何か言われないか?」
 周りには聞こえないように、小さな声でそう訊いてきた。やはり今日の体育の着替えの時に見た、良太郎の痣のことを気にしているようだ。どうやら以前に使った『治癒』の術式で治すつもりらしい。
「痛いには痛いが、これくらい慣れてるしな。うちの親には言ってあるぞ、興味があるから棒術の道場行くことにしたって。費用は火村さんが経費で落とせるようにするって言っていたから、親の方は適当に誤魔化した」
 良太郎の言葉に小さく頷いた悠は、薄く笑って見せる。
「そうか。……やっぱり信用されてるな、久間は。うちの親だとそうはいかない」
 里から帰ってきて以来、悠は以前と比べるとこういう風に自分の考えや思いを口にするようになった。
 他人の愚痴は余りに多いと聞いている方も嫌になるが、もともと自制する性格だと知った以上、悠相手なら多少のことを聞くくらいは苦にならない。それに自分が気に入っていると自覚している相手に必要とされるのは、相手が同性であっても嬉しいものだ。
「下手に信用してるなんて言われると、それはそれで無茶出来ないもんだぞ?」
 思わず自分の顔が少し緩んでいるのを自覚しつつ、そう言う。友達であっても仲間であっても、どちらにせよ他の人間よりは悠との距離が縮まっていることには変わりはない。
「そうか、そうかもな」
 納得した顔で悠がまた頷いた。そして自分の席に戻ると、帰り支度を始める。
 するとそれを待っていたかのように、女の子三人が悠のところへやってきた
「あの、鎮守くん。ちょっと眼鏡外して見せて欲しいんだけど。それ伊達だよね?」
 何か言おうとしたらしい悠の口が開きかけて止まる。多分、外すと見えないからととでも言おうとしたのだろうが、相手に先手を打たれたようだ。
 仕方ないという態度を隠そうともせずに、悠が黒縁メガネを外した。
「わっ」
「やっぱり綺麗な顔してる~」
 返ってきた女の子たちの反応に、眉根を寄せているのが良太郎からは見えた。
 初めて見た時から、悠が派手さはないが地味に綺麗な顔の造りをしているのは良太郎も知っている。 
 寂しげな表情をした時は、どこか儚く見えて、それでいて触れたいと思わせる。そしてそれが自分の中の保護欲や庇護欲を随分と刺激するということも。
「あの、鎮守くん。ちょっとこれ塗って見て欲しいんだけど」
 何気なく良太郎が見ていると、一人がそう言って差し出したのは細長いリップクリームだ。
 それを見た悠の眉根がさらにひそめられた。
「……まさか、僕にメイド服着せるつもり?」
 女の子三人が三人ともに、コクコクコクと頷いている。対する悠はいつもの穏やかな表情とは裏腹に憮然とした顔を隠そうともしていない。
「絶対着ないから。それにいま塗ってもクレンジングないだろ?」
「あったら、メイクさせてもらえるの?」
「あっても、させない」
「じゃあ、メイクしなくていいから、メイド服着てよ」
「それもお断りする」
「ええ~、似合うと思うのに~」
「他を当たってくれ」
 身悶えする女の子たちに悠は素気無く答えを返すと、あとは無視を決め込んでカバンに机の中の物を放り込んでいる。
 悠をメイドの格好にすることは諦めたらしく、顔を見合わせていた三人は向きを変えると今度は良太郎の方に来た。
 そしてその要求は単刀直入に投げ付けられた。
「クマくん、メイド服着て欲しいんだけど」
「……な、なんで俺?どう考えたって他のヤツの方が、」
「ん~、お笑い担当?」
 自分が着せられることはないと踏んでいたのに、予想が外れた。もっとも男にメイド服を着せようというのがそもそもお笑いの方向か。
 良太郎は身に迫る危機に、自分の顔が少し引き攣っているような感じがした。
「いやいやいやいや。俺が着られるようなサイズがそもそもないだろう」
「無理に着ました感が、笑いを誘うと思うけど?」
「最近クマくんと鎮守くん、仲良いよね?一緒にいることも多いし」
「そうそう。相方が断ったんだから、その責任は残った方が取るべきじゃない?」
 彼女達はそう言って、まだ椅子に座ったままの良太郎を見下ろしてきた。
「うっ、それは……」
 じわりとかいていたはずの汗が、たらりと脇腹を流れて落ちたような気がした。
 やっぱり強気に出てくる女の子はどうにも苦手だ、と思いながら、良太郎はどうすればメイド服を着せられる羽目から逃げられるかと考えを巡らせる。
「お、俺専用のメイド服を用意するより、普通のサイズを何人かで着回した方がそれぞれが担当する時間が短くなるから、その方がいいんじゃないのか?用意するのだって、その方が多分楽だ」
 思い付いたままに言ってみたが、意外に彼女達には通じたらしい。他の連中をイケニエに差し出した気がしなくもないが、この際、背に腹はかえられない。
 良太郎が黙って表情を窺っていると、彼女達の様子からは検討に値すると判断されたようだった。
「そうね。その方が恥ずかしい思いをする時間も短くなる訳だし、案外やってもらえるかも」
「赤信号、みんなで渡れば怖くないってね~」
 昔から言われている例えに、それは違うだろうと頭の中でツッコミを入れてしまう。
「じゃあ、まずは男子を身体のサイズ別に分類しよう」
 一人がそう言った言葉に他の二人も頷きながら、女の子達は良太郎の席から離れて行く。
 ほっと肩の力を抜いた良太郎を、鼻を掠める柑橘系の甘い残り香が気疲れを助長するようにうんざりとさせた。
    
    
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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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水鳴沢

Author:水鳴沢
自分の書いてるものはオリジナルBL小説ライトノベル風味じゃないかと思います。

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