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2010-08-08(Sun)

五行風水記~クマとハルカ~重なる心(1)

 
「……ハル」
「ごめん。こんなことまで言うつもりじゃ、なかった」
 そう良太郎に謝り、また両膝を抱えるとそこに顔を埋めるように項垂れてしまった。
 途方に暮れたような寂しげな雰囲気をまとうその姿に、良太郎は並んで座ったまま、その片腕を伸ばすと悠の肩を強く抱き寄せた。
 思いを吐き出してしまったせいなのか、抗う気持ちも気力もないらしく、悠は抱き寄せられるままにされていた。
「……何を言ってやればいいのか、わからない」
 良太郎が思わず漏らした言葉を聞いて、悠が吐息のような笑いをこぼした。
「……めんどくさいヤツでごめんな。僕は自分の背負っていることを、気楽に考えることなんて出来ないんだ」
「……うん」
「だからやめておきなよ、こんな面倒なヤツ。一緒に居てもきっと楽しいことなんてない。自分でも重いヤツだって思うし……」
 他人に見えないモノが見えて、聞こえないモノが聞こえて、街ひとつ滅ぼすくらいの力を持っていて、そしてゲイ。
 確かに普通の人間という枠にはめた時に、オプションが付き過ぎているのは否定出来ない。
 もっとも今となっては『護り人』になった良太郎だってたいして変わらないような気がする。
「まあ、オプションはいろいろ付いてるよな。まだ他にもなんかあるのか?」
「……あとひとつだけある。けどそれは僕もよくわからなくて、うまく説明出来ない」
「そうか」
 どうやら悠の秘密はあとひとつあるらしい。しかも本人にもよく分からないときた。もっとも今更非常識な秘密がひとつやふたつ増えようがたいして変わらない。
 何を言えばいいのか解らないが、良太郎の言えることはちゃんと伝えてやらないといけない。
「なぁ、ハル。一緒に居て楽しいことなんてないって、お前は言うけど、俺は今までそんなことなかったよ」
 良太郎は悠の頭に頬を寄せると、自分の中の消えない想いをそのまま言葉にする。
「お前の考えてることや思っていることを聞けば、俺の中に何かが残る。何かを考えさせられる。お前が笑っていれば、俺はそれだけで嬉しくなる。お前が喜ぶ顔を見れば、もっと喜ぶことをしてやりたいと思う。お前が寂しい顔をすれば、ぎゅっと抱き締めたくなる。……こんなに強くはっきり、そう思わせたのはお前だけだよ、ハル」
 ぐいっと悠の身体を引き寄せると、そのまま自分の膝の上に乗せるように、ぎゅっと抱き寄せた。
 ベッドに寄り掛かった良太郎の身体にそれなりの重みが掛かってくるが、たいした苦にはならない。こんな時は鍛えておいて良かったと思う。現実的なその重さに振り回されることなく、受け止めてやれる。
 悠の存在を自分の腕の中に抱き締めるだけで、触れているところからあっと言う間に熱が生まれ、良太郎の全身に拡がっていく。心臓の鼓動が強く激しくなる。
「いままでの恋なんて、本当の恋じゃないって思えるくらいだ。わかるか、ハル。こうやってお前が腕の中に居てくれるだけで、俺の身体は熱くなるし、嬉しくなるし、安心する」
 もっと上手く飾った言葉が出ればいいのに、と良太郎は思っても、出てくる言葉はどれも平凡なものばかりだ。
「好きだよ、ハル。どうしようもないくらい、お前が欲しいよ。お前の心も身体もこの先の人生も、全部全部俺のモノにしたい」
 悠からどんな言葉を聞いても、結局は良太郎の口から出てくる言葉は、馬鹿のひとつ覚えのように好きだと告げる言葉ばかりだ。
 もっとじっくり時間を掛ければいいのかも知れないけれど、気持ちばかりがあせってしまって、上手くいかない。上手く出来ない。
 初めての本気の恋を、自分でも持て余し気味だということを良太郎自身が、良く解っている。
 でも、やっぱりなんとかして、手に入れたい。手に入れて、幸せにしてやりたい。綺麗な顔で笑って欲しい。
 大人しく良太郎の腕の中に居てくれていても、身体は触れていても、今はまだ互いの存在の間に見えない意識の膜が挟まったままだ。
 早くそれを取ってしまって、繋がりたい。心も身体も手に入れて、知らないところがないくらいに全部に触れて、好きなだけ思うままに味わいたい。
 抑え切れない男の本能に煽られて、身体が熱を帯びていく。
 優しくしてやりたい、守ってやりたい、喜ばせたい、触れたい、抱きたい、貪り尽くしたい。
 良太郎の中でそれら全ての感情がごちゃごちゃに混ざり合っていく。
「こう言ったらお前は怒るかもしれないけど、俺はお前がゲイで良かったよ。こうやってまた好きだって言うことに遠慮しないですんだし、抱き締めても気持ち悪いって言われない」 
「……キミ、どこも遠慮してないだろ。あんなにわかりやすい顔で僕のこと見て」
 胸元に顔を当てたまま、ぼそりと悠が呟いた。どうやら文化祭のことを言っているらしい。
 確かにあの悠の顔は良太郎にとってすこぶる刺激的だった。好きな相手にそれっぽいモノをあんな食べ方されれば反応だってする。
 そんなことを思い出したせいで、辛うじて押さえていた身体の熱が、良太郎の下腹に集まっていく。ただでさえ、好きな相手に触れているのだから、一度スイッチが入ってしまうと、もう止められない。
「……ちょ、なに元気になってるんだ!」
 生憎今日は余裕のあるボクサーパンツだったので、勃起しても押さえる効果なんて全然ない。左腿に沿って収まる感じになっていた良太郎の分身は、一気に膨れ上がり、硬くなりながら頭をもたげて行く。当然角度が付けば、膝に乗っている悠の尻に当たってしまう。
 もぞもぞと悠が身動ぎするが、良太郎は離さない。
「お前が思い出させるからだろう。好きなヤツとくっ付いてたら、男はこうなって当たり前なんだよ」
「なんだよ、それ……」
 心臓がバクバク鳴っているのなんて、胸に顔を当てている悠には丸判りだろう。
「久間の心臓、ドキドキしてる」
「ああ。だってすごい興奮してる」
「……そっか」
 悠の言葉に、良太郎はうんと小さく答えた。
「なぁお前、年上のオッサンじゃないとダメなのか?」
「おっさんって……」
「俺、まさか自分の父親にヤキモチ焼くととは思わなかった」
 良太郎はあの時の自分の気持ちが、そういうものだと気が付いていた。悠が自分にも見せたことない表情を、父親に見せていたのが気に喰わない。
「ファザコンていうか、頼り甲斐があるタイプに弱いっていうか、甘えさせてくれそうな人がいいっていうか」
「じゃあ、俺頑張るから。頑張ってそうなるから。すぐは無理かもしれないけど、絶対そうなるから」
 良太郎が懇願するようにそう囁くと、呆れたような溜め息が胸元から聞こえてきた。
「キミ、本当に物好きだな。僕みたいな面倒な相手じゃなくても、キミならカッコイイからすぐに彼女出来るのに」
 呆れられた様子に少し緩んだ良太郎の腕の拘束を解くと、少し身体を離してから悠がちらりと顔を一瞥した。
「僕なんかのどこがいいのか……」
「すぐに彼女が出来るとか出来ないとかじゃなくて、俺がお前を好きなんだよ。それに」
 良太郎はしっかりと悠の顔を見ながら、次の言葉を紡いだ。自分はいつも見ているという思いを込めて。
「それに、お前いつも寂しそうに笑うじゃないか」
 そう言われた悠の眼に戸惑うような色が浮かぶ。
「さっきの話を聞いて解った。なんでいつもあんなに寂しそうに笑うか。あんなに苦しんで寂しい思いをしてたら、そうもなるよな。」
「久間……」
「お前をひとりにしておけないよ、ハル。あんなに考え込んで、苦しい思いして」
 良太郎はもう一度、悠の手首を掴むと、自分の方へと抱き寄せた。
「俺がそばにいたらダメか?少しでも楽になれない?」
 あの夜、良太郎の腕の中で悠が苦鳴のように漏らした『楽になりたい』という言葉。このままひとりにしておいたら、きっといつか悠は壊れてしまうような気がする。もしそうなったら良太郎は絶対に後悔する。だからそばにいたい。
「俺、お前に優しくしてやりたい。お前を守ってやりたい。そうして少しでもお前を楽にしてやりたい。お前が……お前が背負ったものから」
「……久間」
「まだ高校生で頼りないかもしれないけど、俺頑張るから」
「……本当に後悔しないか?」
 腕の中から掠れた声でそう聞こえた。
「しない。しないって約束する」
「……僕が本気でキミのことを好きになったら、僕の方からは絶対手放してやらないぞ?」
 顔を上げた悠が、そう言いながら良太郎の首に緩く腕を回してくる。
 予想外のもの凄い内容に、言われた良太郎の頭がしばらくの間、それを理解出来なかった。
「……まじで?」
「うん」
「ハルって実は結構俺のこと、好きだったりする?」
「……僕は寂しい人間なんだ。あんなに好きだ、好きだって言われて、優しくされたら、もっと欲しくなって当たり前じゃないか」
 そう言って、良太郎の首元にぎゅっとしがみ付いてくる。
「本当に僕でいいのか?」
「うん。ハルがいい。俺はハルがいいよ。他には要らない」
 耳元で囁かれた悠の声に、良太郎も悠の耳元でそう囁き返した。
 そして、悠の身体に自分の腕を回して、改めて身体の感触と温もりを確かめる。まだ自分のモノだという実感は湧かないけれど、ようやく手に入れたという安堵感がじわじわと身体に満ちて行く。 
「くま……」
「うん?」
「ずっとひとりで寂しかった」
「うん」
 掠れた声で抱き締めた悠から長く奥底に隠されていた本心がこぼれてきた。さらに切なげな吐息が良太郎の項に掛かる。
「もうひとりは、やだ。ひとりぼっちは、やだ。ひとりはこわい……ほんとうにこわい」
「うん。大丈夫だから。俺がそばにいるから。もうひとりじゃないから」
「うん……もっと、もっと、ぎゅっとして」
 子供みたいなセリフに、聞かされた良太郎の目の方が潤んでしまう。
『まだ高校生なのに、いつも落ち着いてられるって方が変じゃないか』
 悠にそう言ったのは良太郎自身だ。だから自分の寂しさを素直に出してくるのも、間違いなく悠の本心だ。
 言われた通りに、抱き締める力を少しだけ強くする。
「ん……あったかい」
 満足そうな吐息が悠の口から漏れた。
 聞こえたその言葉に腹の底から何かが込み上げてきて、良太郎はもっと何かをしてやりたくて、堪らなくなる。
「好きだ……好き……好きだよ、ハル」
「……うん。僕も」
「いっぱい優しくするから。ずっとそばにいるから。ひとりにしないから」
「うん」
 込み上げてくる気持ちを言葉に乗せて、良太郎はそう囁き続ける。
『言霊』はこの世界に何かしらの影響を与えるという。だったら、良太郎が言った数だけ、悠が幸せに近付けば良い。幸せになれば良い。だから、もっと言ってやる。欲しがる分だけ、欲しがる以上に言ってやる。
「絶対放さない」
「うん」
 そう言って、良太郎はもう少しだけ抱きすくめる腕の力を強くする。
 悠の首に埋めた鼻に、呼吸をするたびにあの嗅ぎ慣れた甘さを少しだけ含んだ石鹸に似た匂いが、入り込んでくる。
 しばらくそうしていたが、身体が触れたところから伝わってくる温もりと鼻をくすぐる匂いに無意識に後押しされて、悠の首元に鼻を押し付けた。
「んんっ」
 くすぐったかったのか、悠が声を漏らした。
 どこか甘さを含んだ声が良太郎に、触れたいという欲求をじんわりと自覚させた。
 あれだけ欲しかった悠が自分の腕の中にいる。そう思った途端に良太郎の鼓動が激しくなった。
 すぐにでもジャージの裾から手を入れて、出来れば存分に悠に触れたい。触りたくて触りたくて堪らない。
 鼓動が激しくなっていくにつれて、自分でも抑え切れない勢いで呼吸が荒くなっていった。同時に下腹で一時は萎えた分身が力を漲らせてくる。
 ふーっ、ふーっ、とまるでケダモノのような鼻息になっている。
「……くま、ちょ、鼻息荒いってば。なんでいきなりそんなに興奮してるんだ?」
 驚いた悠が良太郎の腕から逃げようともがくが、そうはさせない。抑え込んで、さらにきつく抱き締める。
「ああ、もう、わかったから!わかったから!逃げないから!ちょっと弛めて!」
 隣の部屋の兄の存在を気にしてか低く抑えた声で、それでも強い口調で悠が良太郎に言ってきた。
 良太郎が逃げられない程度に少しだけ弛めた腕の中で、仕方なく身体をもたれ掛けさせてきた悠が溜め息を吐く。 
「くま、何か硬いモノが当たってるんだけど」
 変に悠が身動きしたせいで刺激された良太郎の分身は、ほぼ完全な臨戦状態になっていた。ジャージを持ち上げたそれが悠の身体に当たっている。
「……やっぱり、したい、よね?」
「……したい」
「それが、ふつーだよな……」
「うん」
 先程までは振られていた状態とはいえ、良太郎は諦められていなかった訳だから、オアズケを喰らっていたようなものだ。
 しかも夜の密室で二人っきり。さらに堪らなく好きな相手の体温を感じていた訳だから、そうならない方がおかしい。
「……いいよ。しよう。しようか、えっちなこと」
 悠がそんなに長い時間も考えた様子もなく、あっさりと耳元で良太郎に囁いた。
 言われた言葉に、ごくっと良太郎の咽喉が鳴る。
 思わず抱き締めていた悠の身体を離すと、わしっと肩を掴んで、まじまじとその顔を見詰めた。
「……いいのか?」
「いいよ。ずっとオアズケさせてたような気がするし。それに前に言ったことあるはずだ。『僕だってそういうことに興味ない訳じゃない』って」
 それでも目を伏せて、視線を外しているあたり、少しは恥じらいがあるようだ。
 悠の表情に堪らないくらいの可愛さを感じて、良太郎は思わずもう一度抱き締めた。
「……好きだ」
「うん」
「優しくする」
「うん」
 そう囁いた良太郎の声に、抱きすくめられて少し苦しそうな、そんな悠の声が返ってきた。 
 
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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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水鳴沢

Author:水鳴沢
自分の書いてるものはオリジナルBL小説ライトノベル風味じゃないかと思います。

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